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日本が挑む国産「フィジカルAI」:ソフトバンク主導の新会社ノエトラに国が3873億円

tech2026-08-18 · 1 min read · 328 reads

経済産業省はソフトバンクが主導する新会社ノエトラに2026年度分として3873億円を投じ、ロボットや機械を動かす国産の基盤モデル、いわゆるフィジカルAIの開発を後押しする。汎用AIでOpenAIと正面から競うのではなく、日本が得意とする製造とロボットの強みを生かす戦略だ。

日本が、独自の「フィジカルAI」の開発に向けて大きく踏み出した。経済産業省は、ソフトバンクが主導する新会社「ノエトラ」に対し、2026年度分として3873億円を投じ、ロボットや機械を自律的に動かすための国産の基盤モデルの開発を後押しすると発表した。これは、日本のAI戦略における重要な転換点として国内外から注目を集めている。

支援の規模は極めて大きい。経済産業省が6月30日に公表したこの3873億円、日本円にして約24億ドルは、あくまで2026年度分の委託費の第一弾にあたる。政府はさらに、実施機関であるNEDOを通じて、2026年度から2030年度までの5年間で最大1兆円、およそ60億ドルの規模にのぼる資金を投じる計画を明らかにしている。

ノエトラを支える顔ぶれも重厚だ。中核となる出資企業には、ソフトバンク、NEC、ソニーグループ、そしてホンダという日本を代表する大手が名を連ねている。ソフトバンクの関与を率いるのは孫正義氏であり、単独の一企業ではなく、産業の垣根を越えた国家的なプロジェクトとして位置づけられている点が、この取り組みの大きな特徴である。

フィジカルAIとは何か

フィジカルAIは、文章や画像の生成ではなく、現実世界でロボットや機械を自律的に動かすことを目的としている。
フィジカルAIは、文章や画像の生成ではなく、現実世界でロボットや機械を自律的に動かすことを目的としている。

では、フィジカルAIとは何を指すのか。それは、文章や画像を生成する従来の生成AIとは異なり、ロボットや機械を現実の空間のなかで自律的に制御することを目的とした基盤モデルである。言語だけでなく、画像や映像、さらにはセンサーから得られる各種のデータまでを統合的に扱う、マルチモーダルな仕組みがその核となっている。

戦略上のねらいも明確だ。ノエトラは、ChatGPTに代表される汎用AIの領域で、OpenAIと正面から競うことは目指していない。その代わりに、日本が長年にわたって培ってきた製造業やロボット技術という強みを生かし、国内で安全にデータを扱いながら、現実世界で動く産業用AIという独自の土俵で勝負を挑もうとしているのである。

国と企業の役割分担

このプロジェクトでは、関係者の役割分担も明確に設計されている。実用的なモデルの開発と社会実装は新会社であるノエトラが担い、より長期的で先端的な研究開発は、国立の研究機関である産業技術総合研究所、いわゆる産総研が受け持つ形となっている。公募の期間は2026年3月24日から4月22日までと定められていた。

対象となる応用分野も幅広い。経済産業省の赤沢亮正大臣のもとで進められるこの取り組みは、製造や物流、そして医療といった実社会の領域での活用を強く想定している。加えて、消費電力を抑えたエネルギー効率の高さも重視されており、単なる性能の競争にはとどまらない、地に足のついた実用性が意識されている。

なぜ今、国産AIなのか

なぜ今、あえて国産のAIなのか。その背景には、AIの主権をめぐる各国の激しい競争がある。海外の汎用モデルへの依存を減らし、国内でデータを安全に管理したいという狙いに加え、少子高齢化によって労働力が細っていく日本にとって、製造や物流の現場を支えるロボットの高度化は、避けて通れない切実な課題となっている。

興味深いのは、ソフトバンクが二つの賭けを同時に進めている点である。同社はOpenAIに対しても巨額の投資を続けており、追加の100億ドルを含めて累計は600億ドルを超えた。7300億ドルとされる評価額のもとで出資比率は約13%に達する見込みで、世界の汎用AIと国産のフィジカルAIの双方に、抜かりなく布石を打っている。

今後の展望

今後の展望として、ノエトラは自前の基盤モデルを、2027年ごろの提供開始を目標に開発を進めるとされている。さらに、その後も各メーカーが持つ現場のデータを取り込みながら、年々性能を高めた改良版を投入していく構想であり、一度きりの開発ではなく、継続的な進化を前提とした長期的な設計となっている。

賭け金は決して小さくない。1兆円という規模は、日本が得意とする産業やロボットの強みを、はたしてAIの競争力へと転換できるのかを問う試金石でもある。米国や中国もまた、自国の主権的なAI基盤の構築を急いでおり、日本がその狭間で独自の立ち位置をしっかりと確立できるかどうかが、いま問われている。

最終的に問われるのは、やはり実行力である。潤沢な資金があったとしても、人材や計算資源の確保、そして企業間の連携といった現実的な壁を越えられるかどうかは、なお未知数のままだ。ノエトラをめぐる1兆円の挑戦は、日本の技術戦略そのものが試される、大規模な実証実験になろうとしている。

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佐藤 健介
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