avalw news
佐藤 健介佐藤 健介VIEW PROFILE →

OpenAI、Cerebras搭載の「Ultrafast」を発表:最上位モデルGPT-5.6 Solが毎秒750トークンで最大14倍高速に

tech2026-08-19 · 1 min read · 143 reads

OpenAIは8月13日、半導体企業Cerebrasのウエハースケール・エンジンを使い、旗艦モデルGPT-5.6 Solを標準の最大14倍、毎秒750トークンで動かす新サービス階層「Ultrafast」を限定プレビューとして公開した。速度が生成AIの新たな主戦場になりつつある。

米新興半導体企業のCerebras(セレブラス)は8月13日、OpenAIと共同で、同社の旗艦(最上位)言語モデルであるGPT-5.6 Solを従来の最大14倍の速度で動作させる新しいサービス階層「Ultrafast(ウルトラファスト)」を発表した。まずは一部の法人顧客に絞った限定プレビューとして、OpenAIのAPI上で提供が始まる。

Ultrafastの最大の特徴は、その圧倒的な出力速度にある。GPT-5.6 Solは通常版とまったく同じ知能水準を保ったまま、毎秒最大750トークン(単語や記号を分割した最小の処理単位)を生成する。これは標準処理の最大14倍にあたり、生成AIの応答が事実上リアルタイムで返ってくる水準に近づいたことを意味する。

ここで重要なのは、速度を上げるためにモデルを小型化したり能力を削ったりしていない点だ。Ultrafastは通常のGPT-5.6 Solと完全に同一のモデルをそのまま動かしており、知能や回答の質を犠牲にせずに待ち時間だけを大幅に短縮している。OpenAIは、この速度が最も効果を発揮する領域を実運用の中で見極めたいとしている。

速度を生む技術

推論の高速化はデータセンターのハードウェア設計そのものを問い直している。(イメージ写真)
推論の高速化はデータセンターのハードウェア設計そのものを問い直している。(イメージ写真)

この高速化を支えているのが、CerebrasのWafer-Scale Engine(ウエハースケール・エンジン)と呼ばれる独自設計のチップである。一般的なGPUが多数の小さなチップに分かれているのに対し、Cerebrasはシリコンウエハー一枚をまるごと一つの巨大なプロセッサとして使う、他社にはない構造を採用している。

このチップは44ギガバイトものメモリー(SRAM)をチップ上に直接載せている。これによって、GPUベースの推論で速度低下の主因となるメモリー帯域の制約、いわゆるボトルネックを解消し、巨大なモデルの重みを高速に読み出しながら文章を次々と生成できる。ここが従来型の半導体との決定的な違いだと同社は説明する。

CerebrasのAndrew Feldman最高経営責任者(CEO)は今回の発表で、「速度と知能はもはや両立しないものではない」と述べ、高性能なモデルを高速に動かせる新しい段階に入ったと強調した。OpenAI側もこの提携を、利用者の思考や作業の流れにそのまま追随できるAIを実現する一歩と位置づけている。

どこで役立つのか

OpenAIによれば、Ultrafastが真価を発揮するのは、待ち時間が成果を大きく左右する分野だ。具体的には、複数の手順を自動でこなすエージェント型の作業、プログラミング支援、詐欺検知や金融取引のように一瞬の判断が求められる処理、そして利用者へ即座に反応を返す対話型サービスなどが主な想定として挙げられている。

速度の効果はベンチマークにも表れている。Cerebrasによると、難関の知識テスト「Humanity's Last Exam」では、GPT-5.6 Solを従来より約7倍速く処理し、78時間27分かかっていた作業を11時間11分で完了させたという。実務を模した別の評価「GDP-Val」でも、回答品質を落とさずに5.6倍の高速化を達成したとしている。

Cerebrasは競合モデルとの比較も示した。同社の計測では、Ultrafastは高速モードで動くClaude Opus 4.8よりおよそ5倍、Claude Fable 5よりおよそ11倍速いとされる。ただし、これらの数字はいずれもCerebras自身による測定であり、第三者による独立した検証が今後の客観的な評価では欠かせなくなるだろう。

競争と今後の課題

一方で、現時点では公開されていない情報も少なくない。Ultrafastはあくまで一部顧客向けの限定プレビューであり、正式な料金体系も、誰でも使える一般提供の開始時期も明らかにされていない。OpenAIは、Cerebrasの処理能力の拡大に合わせて、利用できる顧客を段階的に広げていく方針だとしている。

今回の発表は、AIの推論を速くする競争が新たな局面に入ったことを示している。Cerebrasは同じ日にGoogleのGemini 3.7 Flashの高速化にも関わっており、特定の一社だけに縛られない推論高速化のパートナーとしての立ち位置を強めている。モデルの賢さに加え、速度そのものが競争の焦点になりつつある。

モデルの賢さを競う段階から、その賢さをいかに速く安く届けるかを競う段階へと、生成AIの主戦場は移りつつある。応答が一瞬で返るようになれば、AIを組み込んだ業務ソフトや、自律的に判断して動くエージェントの実用性は一段と高まる。Ultrafastは、その大きな方向性を象徴する動きだと言えるだろう。

佐藤 健介
WRITTEN BY THE AUTHOR
佐藤 健介
2026-08-19 · 1 min read · 143 reads
View profile →
VERIFY THIS STORY
ASK AI
MORE FROM 佐藤 健介
Report this articlesupport@avalw.com